サーバー移行と担当者引き継ぎは、Webサイト運営における最も事故が起きやすい作業の一つです。「切り替えたらメールが届かなくなった」「サイトが表示されなくなった」というトラブルの多くは、事前確認の不足が原因です。
現在の構成を把握する
移行作業を始める前に、現在の構成を正確に把握します。これが分からないまま作業を進めるのが最も危険です。
どのサーバーを使っているか
レンタルサーバー判定ツールにドメインを入力すると、現在のホスティングサービスが分かります。「どこのサーバーか分からない」という状態で引き継いだ場合に有効です。
PTR逆引き・CNAMEチェーン・HTTPヘッダーの3軸で判定するため、前任者の記録がなくても現状を把握できます。
DNSレコードの全件確認
DNSレコード確認ツールでA・AAAA・MX・NS・TXTレコードをすべて記録しておきます。特にTXTレコードにはSPF・DKIM・DMARCが含まれており、移行先でも必ず再設定が必要です。
移行前に記録するDNSレコード:
□ A レコード(IPアドレス)
□ AAAA レコード(IPv6)
□ MX レコード(メールサーバー)
□ NS レコード(ネームサーバー)
□ TXT レコード(SPF・DKIM・DMARC・各種認証)
□ CNAME レコード(サブドメインの設定)
### SSL証明書の確認
SSL証明書確認ツールで証明書の種類・発行者・有効期限を確認します。
- Let's Encrypt: 移行先サーバーで再発行が必要
- 有料証明書: 発行会社と証明書ファイルを引き継ぐ手続きが必要
メール環境の確認
メールサーバー判定ツールでドメインのMXレコードを確認します。
- Webサーバーと同じホスティングのメール機能を使っているか
- Google Workspace・Microsoft 365を使っているか
- 独立したメールサーバーを使っているか
Webサーバーと同じホスティングのメール機能を使っている場合、サーバー移行と同時にメール設定も移行が必要です。
サーバー移行の基本手順
1. 移行先に全データをコピーする(本番切り替え前)
□ Webサイトのファイル一式をアップロード
□ データベースをエクスポート→インポート
□ メールアカウントの設定を移行先に作成
□ SSL証明書を移行先で発行・設定
### 2. 移行先で動作確認を行う(hostsファイルで確認)
PCの hosts ファイルを一時的に書き換えることで、DNS切り替え前に移行先での動作を確認できます。
# /etc/hosts (Mac/Linux) または C:\Windows\System32\drivers\etc\hosts (Windows)
203.0.113.100 yourdomain.com # 移行先のIPアドレスを指定
確認が終わったら hosts ファイルの変更を元に戻します。
3. TTLを短くする(切り替えの1〜2日前)
DNSのTTL(Time To Live)を短くしておくと、切り替え後のDNS伝播時間を短縮できます。
通常: TTL 86400(24時間)
切り替え前: TTL 300(5分)に変更
この作業は切り替えの24時間以上前に行います。TTLが短くなった後にAレコードを変更すると、世界中のDNSキャッシュが5分以内に新しいIPに更新されます。
4. DNSのAレコードを変更する(本番切り替え)
移行先サーバーのIPアドレスにAレコードを変更します。この段階でWebサイトのファイルと設定が移行先に存在していることを確認済みのはずです。
5. DNS伝播の確認
nslookup yourdomain.com などで返ってくるIPアドレスが新しいサーバーのIPになっているか確認します。
伝播完了前は一部のユーザーが旧サーバーに、別のユーザーが新サーバーにアクセスする状態になります。この期間(数時間〜最大48時間)は両方のサーバーでサイトが動く状態を維持します。
メールの移行で特に注意すること
MXレコードはWebサイトとは独立して考える
WebサイトのAレコードを変更しても、MXレコードを変更しない限りメールは旧サーバーに届きます。逆に、MXレコードを先に変更するとメールが届かなくなります。
メール移行の順序:
1. 移行先でメールアカウントを作成
2. SPF・DKIM・DMARCを移行先の設定に合わせて更新
3. MXレコードを変更
4. 変更後24時間以上経過してから旧サーバーのメール機能を停止
### メール設定の移行
Outlookやメールアプリの設定(IMAPサーバー・SMTPサーバー)も変更が必要になる場合があります。全スタッフに周知して混乱を防ぎます。
移行後の確認チェックリスト
Webサイト
□ HTTPSでアクセスできるか
□ HTTPからHTTPSへリダイレクトされているか
□ wwwあり・なしの両方でアクセスできるか
□ お問い合わせフォームが動作するか
□ 管理画面にログインできるか
メール
□ メールの送受信ができるか
□ 送信メールが迷惑メールに入っていないか
□ SPF・DKIM・DMARCの認証が通っているか
DNS
□ Aレコードが新しいIPを返しているか
□ MXレコードが正しいか
□ TXTレコード(SPF等)が引き継がれているか
## 引き継ぎ資料に必ず含める項目
担当者交代時に渡す引き継ぎ資料には以下を必ず含めます。
- ドメイン登録会社・管理画面のログイン情報
- レンタルサーバー会社・管理パネルのログイン情報
- ネームサーバーの変更先(現在のDNS設定をスクリーンショットで記録)
- SSL証明書の種類・有効期限・更新手順
- メールサービスの種類(レンタルサーバー/Google Workspace/Microsoft 365)
- WordPress管理画面のURLとログイン情報
- バックアップの場所と頻度